ゆっくり動画チャンネルの収益化停止は当然のことである

2026年1月末頃から、大量のYouTubeチャンネルが収益化停止され始めている。近年、生成AIによって大量生産された動画がYouTube上に蔓延している事態を受け、量産型で無価値なコンテンツを一掃するための処置だそうだ。実際、例えば日本称賛系の動画は生成AIで量産されていて、情報商材として手法が出回っているほどである。その一方で生成AIを使用していないにもかかわらず、巻き沿いを食らうような形で収益化停止が相次いだのが、ゆっくり動画チャンネルだ。ゆっくり動画はかなり一般的な形態で、視聴者にとって親しみ深いことから、物議を醸している。

一口にゆっくり動画と言っても、運営の仕方や動画の内容は様々だ。私がここで言及したいのは、ゆっくり解説、政治・時事系、2chまとめ、反応集のことであり、この記事においてゆっくり動画と言ったときはそれらを指すことにする。定義的にゆっくり動画ではないものも含むが「別ソースから情報を取ってきて、機械音声に読み上げさせる動画全般」くらいの意味合いと思ってほしい。

こういった動画は誰が作成しても同じような内容になるし、実際に同じ内容の動画が大量に投稿されている。Webライターの間では「コタツ記事では検索結果に上がらない」とよく言われるのだが、ゆっくり動画はまさにコタツ記事の動画版であり、コタツ動画と言えるだろう。ちなみにコタツ記事とは、自分で実際に取材に行ったりモノを試したりすることなく、ネット上の情報だけを参考に執筆する記事のことで、炬燵の上で記事作成が完結することからそう呼ばれており、量産型の無価値な記事という文脈で使われることが多い。

特定のゆっくり動画チャンネルを応援している人からすれば、無価値なコンテンツには見えないかもしれないが、チャンネル運営側からすれば、無価値なコンテンツを作成している自覚はある。私は現在進行形でいくつかのYouTubeチャンネルに関わっているが、その視点から見てゆっくり動画は無価値なのだ。ゆっくり動画を作成する手順を見れば、いかに無価値なコンテンツなのかが理解できるだろう。まずゆっくり動画においては、チャンネル所有者は動画にあまり関わっていないことが多い。非属人的で量産や売買が可能であるという点から、ビジネスとして1人でいくつものゆっくり動画チャンネルを所有し、プロデューサーとして台本作成者や動画編集者をネット上で雇うという形態をとっているのだ。しかもゆっくり動画には、それほど高品質な文章や編集が求められていないため、安い賃金で雇うことが可能であり、利益率は非常に高い。そして低賃金で作らせた台本や動画を検収して、YouTubeにアップロードするという流れだ。

とはいえこの構造に関してはさほど珍しいことではない。重要なのはここで触れなかった動画の企画についてであり、これは他者の動画やサイトを模倣するパターンが多い。プロデューサーが企画を考えて台本作成者に依頼するのだが、その際には参考動画や参考サイトのURLが添付されていることが多く、要するにその内容を模倣しろということだ。明らかに個人の努力によって作られた内容であっても、無慈悲に模倣し、動画の一部とするのだ。もちろんこれはYouTubeの常でもある。YouTubeでは伸びている他者の動画と似たような動画を出すことで、相乗効果で伸びやすくなるという性質があるため、企画を模倣すること自体は昔から行われていたことだ。YouTubeに限らず、模倣によって発展してきた事業も多い。しかしゆっくり動画に関しては、扱う題材および、先ほど言及したように台本や編集にそれほどの質が求められないことから、コタツ記事のごとく、全く同じと言って良い動画が量産されてしまうことに問題がある。生成AIで作成されていようが、人の手によって作成されていようが、量産型であることに変わりはない。実際にゆっくり動画を閲覧してみると、ネットから拾ってきた画像を貼り付け、それを紙芝居のように切り替えているだけであり、動画編集1日目の初心者でも作成できるレベルだ。内容に関しても、他チャンネルやGoogle検索、ニュースサイトをコピペして読み上げているようなものしかない。はっきり言って、ゆっくり動画の台本作成や動画編集をするくらいなら、コンビニでアルバイトをする方が時給は高いし社会の役に立つ。それにゆっくり動画の編集程度では何のスキルも身に付かない。これでは量産型だとみなされても仕方がなく、ゆっくり動画チャンネルの収益化停止は必然であると言うほかない。

ここで説明したようなビジネス的ゆっくり動画チャンネルは、量産型であることから収益化停止されているが、一方で個人が熱量を込めて運営しているようなゆっくり動画チャンネルに関しては、収益化停止されていないケースが多い。収益化停止の条件は量産型かどうかであり、ゆっくり動画かどうかではない。ただ単にビジネス的ゆっくり動画が、量産型とみなされても仕方のないほどクオリティの低い出来であるというだけであり、機械音声が原因ではないのだ。肉声を使用していても収益化停止されている例もある。逆に言えば、収益化停止されているのはビジネス的ゆっくり動画チャンネルである可能性が高く、観る価値はないということだ。運営に関わっている私が言うのもなんだが、視聴者としては無価値なチャンネルを判別できる良い機会なのではないかと考えている。