2023年11月に『ライザのアトリエ2』をクリアしてから約1.5年後、ようやく『ライザのアトリエ3』をプレイしはじめ、無事クリアした。私にとってこの『ライザのアトリエ』が初のアトリエシリーズだったわけだが、はじめは主に調合関連で戸惑いつつも徐々に慣れていき、自分なりにコツを掴むまでに至った。
さて、『ライザのアトリエ3』に関しては全実績を解除するまでのプレイ時間が100時間、起動したまま数時間放置することが何度かあったため実際のプレイ時間は80時間くらいだろうか、かなりのボリュームがあり、非常に満足のいく体験だったと言って良い。そこで『ライザのアトリエ3』をクリアしての感想レビューを書いていく。(一部ネタバレを含む)
全体的な印象
キャラクターをレベリングしてボスを倒すことで成長を感じるというRPGの基本からは少しズレている印象を受けた。レベルアップで得られるステータス上昇は微々たるものであり、調合によって作れる装備やアイテムのほうが圧倒的に重要だからだ。レベルが不要というわけではないが、わざわざレベリングの時間を設ける必要性はなく、ランダムクエスト達成のために雑魚敵と戦うくらいで十分と言える。
錬金術士の物語なので、レベリングより調合が重要になるのは当然と言えば当然であり、プレイヤーは調合によって成長を感じられるようになっている。はじめは調合レシピが少なく、簡単なものしか調合できない上に品質も低いが、新しい素材を採取したり高品質な採取道具を調合したりすることで、多くの調合品を高品質に仕上げられるようになる。要求値の高い調合品を作れるようになってくると成長感や達成感があると同時に、終盤に差し掛かった雰囲気を感じて物寂しくもある。
アトリエシリーズに慣れ親しんだ人からすればそうではないのかもしれないが、レベルではない別の要素が成長の証というのは個人的にかなり新鮮さを感じた。
良:ストーリー
錬金術士の功罪にしっかりと向き合った上で未来に向けて進んでいくというメインの流れの中で、1人1人の成長を感じられるストーリーとなっていた。ライザで言えば、万象の大典や異界に関連する錬金術士絡みの目の前の問題を解決しようと動く中で、自身の将来について思案するシーンがいくらかあった。分かりやすいところでは、キャラクタークエストで仲間たちと将来について話し合うシーンだ。NPCに関しても、サルドニカでは魔石派vsガラス派という現状の問題を解決して未来の産業に繋げるという流れだったし、フォウレの里でも光の種の枯渇や保守的すぎる姿勢という現状の問題を解決して、行き詰った未来を変えるという流れだった。特にフォウレの里は以前のクーケン島と似た体質であり、ディアンは過去のライザたちそのものだったことから、ワールドクエストなどでも分かっていたことではあるが、クーケン島も未来に向けて少しずつ動き出していることが窺えた。凝り固まった思考から脱却して未来を切り開いていくことを成長と呼ぶのかもしれない。
ストーリーの具体的な内容に関しては、1や2から出てきていた錬金術士やフィルフサ、竜や門といった要素をしっかりと回収して、どういったものなのかを明確にしてくれたのはスッキリした。過去を軽く触れるだけ触れて謎のままだったアンペルのバックグラウンドも、キャラクターとしての深みを与えてくれた。
ただし、ナンバリングなので当然ではあるが、1と2をプレイしていることが前提となっているストーリーだと感じた。Tipsなどによるフォローが充実しているため、1と2を未プレイでも困ることはなさそうだが、ライザたちが過去を懐かしむような描写がいくらかあるし、キャラクターの過去を知っているからこそ今の成長が感慨深いということもあるため、既プレイであることが望ましいだろう。例えばボオスに関して言えば、1での変化から2での努力を知っているからこそ、キロの「ボオス、立派になった」というセリフが際立つ。『ライザのアトリエ3』を最大限楽しむという意味で、1と2のプレイは必須と言える。
良:キャラクター関連
ライザ含めて11人の仲間がいるが、それぞれのキャラクターに冒険の目的や冒険での役割があり、要らないキャラクターや空気になっているキャラクターがいないように感じた。それぞれ今の立場やこれまでの経験が違うことで、そのキャラクターにしかできない思考や立ち回りをしていて、しっかりと個性が目立っていた。例えばサルドニカでのクラウディアとボオスの立ち回りはこの2人だからこそできたことだし、2人の成長を感じるシーンでもある。3からの新キャラクターであるディアンは、世間を何も知らないからこその純粋な考えでライザの手助けをしたシーンが目立った。
すべてのキャラクターにサブストーリーが用意されていて、新規キャラクターに関しても掘り下げがあるし、メインの4人以外も平等な扱いを受けていたように感じるのも好印象だ。カラに関してはそもそも1000歳であり成熟しきっているため成長や掘り下げこそさほどないものの、ストーリーのキーパーソンであることに加え、属性がてんこ盛りであることから、印象に残るキャラクターに仕上がっている。ちなみに私の最もお気に入りはカラである。
戦闘面に関しては、装備さえ整えておけばどのキャラクターを使っても問題ないように感じた。アイテムを使う操作キャラクターに関してはライザかアンペルが良さそうだが、他に関してはどのキャラクターをどの組み合わせで使っても不都合はないだろう。キャラゲーの側面もあるため、自分の好きなキャラクターを使っても不利にならない点は嬉しいポイントだ。
良:やり込み
実績解除に関しては、作業感をさほど感じなかった。プレイしていれば自然に達成できる実績が多く、他の実績に関しても「やらされている感」を感じることはほとんどない。例えばキャラクタークエストに関する実績は、キャラクターの掘り下げが好きな私からすれば当然達成できる。「ソードマスター3兄弟の依頼」に関しては、そもそも意味が分からずにネットで調べた上で「ソードマスター」を超特性に持つ素材を探すという作業じみたものになったが、こうした面倒な実績がいくつかあるのは仕方のないことだろう。個人的には「全宝箱を入手する」という実績がないのは評価したい。
やり込みとはややズレるが、マップに無駄がないのは印象が良い。それぞれの地域ごとにそれなりに広いマップが用意されているが、何らかのクエストでほぼすべてのランドマークを訪れることになる。マップを解放するためだけに機械的に訪れる必要がないだけでなく、特にクーケン島周辺地域においてはライザたちクーケン島組だけでなくプレイヤーにとっても思い出深い場所であり、そういった意味でもマップ関連はよくできていると感じた。
微妙:ラスボス戦の演出
ラスボス戦の演出に関しては、フィーの出番を作り、ライザとの繋がりを強調するためだったのだろうが、個人的には不要に感じた。というのも、ラスボス戦の時点で装備やアイテムがかなり完成された状態であり、全く苦戦しなかったからだ。楽勝なのになぜかライザたちが倒れるという状況になってしまい、不自然でしかなかった。「もともとラスボスが異次元級に強くてライザたちだけではどうしようもないところを、フィーの手助けにより強化されたことで戦えるようになる」というような流れであれば良かったかもしれないが、急にラスボスのHPが半分を切らなくなったかと思えば次のチャージ攻撃でいきなりワンパンされたときは驚いた。
こちらの装備が完成されすぎていて、運営の想定より強くなりすぎていたという可能性は否定できない。最上級の装備を品質999で用意できていたし、「全能力強化++Lv.99」のような強い特性も付けていた。とはいえ調合がメイン要素の1つである以上、ラスボス戦前に最上級の装備を用意できていることは普通だろうし、特性にこだわっているプレイヤーが少なくないというのは想定できるはず。このラスボス戦の演出に関しては、他にやりようがあったのではないかと気になった。
未来への姿勢に共感できる
一部微妙に感じたことがあるものの、全体的に見れば『ライザのアトリエ3』は非常に面白い作品だったと評価する。特に、過去は過去で受け止めながらも断ち切って未来に向けて進んでいくというだけでなく、未来を希望に満ちて約束されたものだと楽観視していない姿勢は共感できるものだった。例えばライザは人間の世界でフィーと暮らせるようにしたいと思ってはいるが、いつになるのか、生きているうちにできるかどうかも分からない、というように考えている。一方で課題だったクーケン島の安定化問題は、今回の旅を通して解決することができた。先の見えない未来を目指して今できることをやるという姿勢が、ありきたりと言えばありきたりだが、現実に即しているようで印象深かった。このように現実に即しプレイヤーに刺さりやすい投げかけをしてくれる作品を良い作品と言うのではなかろうか。