「放置少女」や「AFKアリーナ」といったスマホゲームタイトルをテレビCMなどで耳にしたことがある人は多いだろう。これらは放置系というジャンルに分類され、スマホを閉じて仕事や就寝している間に自動でダンジョン周回が行われてキャラクターの育成素材を入手できるという特徴があるゲームだ。ダンジョン周回だけでなくアリーナのような対人戦に関しても自動で行われ、プレイヤーは素材を使ってキャラを育成し、パーティを組んだりガチャを回したりするだけで良い。
ここで一般的なゲーマーが思うのは「それって何が面白いの?」ということだ。一般的にゲームといえば、自分の手で戦闘に勝ったり努力して成長したりすることに面白さや達成感がある。一方で放置系では自分ができるのはパーティ編成までであり、実際の戦闘には一切干渉できない。一体何が楽しくて、どんな人が何を目的に放置系ゲームをプレイしているのだろうか。
結論:おじさんがアイデンティティを保つため
結論としては、疲れたおじさんたちがアイデンティティを保つために放置系をプレイしていると考える。10代の多くの人、主に男子はゲームをプレイし、ゲーマーであることが自分のアイデンティティになっていることもある。特に10代の多くは何者でもなく、ゲーマー以外の大層な称号を得られないからだ。しかし20代になり就職すると、ゲームに割ける時間が少なくなる。これは遊べる時間が物理的に減ることに加え、平日の疲れをとるために休日は半日寝て過ごすといった体力・気力の無さに起因する。すると自分を自分たらしめるゲーマーというアイデンティティが剥がれ落ち、無の存在になってしまう。
ここで放置系の登場だ。放置系はソファーで横になりながら片手でスマホをポチポチするだけでプレイでき、煩わしい技術や思考を必要としない。ストーリーやデイリークエストなども無い、もしくは無いに等しいため、体力・気力のなくなったゲーマーにはもってこいの存在であり、ゲーマーというアイデンティティを簡単に保持できる。実際、放置系は20~40代の男性ユーザーが最も多い。スマホゲーム全体で見れば10代が圧倒的に多いため、放置系は疲れたおじさんがゲーマーであり続けるために足掻いた結果たどり着くジャンルであると言って良いだろう。
なお、これは批判ではなく自虐に近い。実際に「偽りのアリス」という放置系をプレイしていた経験からすると、放置系はストーリー物のゲームや対戦ゲームと違って時間を全くかけずに成長や達成感を感じられるため、日々の生活で疲弊したり行き詰まったりしている状況には心地良いのだ。
老害:ゲームの在り方の変化
関連して、「ゲームは自分の手でハードルを越えるのが楽しい」という考えがそもそも老害臭いのかもしれない。以前はゲームボーイやDSで遊べる買い切り制の携帯ゲームが主流だったが、今では基本無料の課金制スマホゲームが主流だ。スマホゲームはスマホで手軽にプレイするものであることに加え、「キャラゲー」という言葉があるように、ガチャでキャラクターを手に入れることに重きが置かれている傾向にある。つまり例えばドラクエのように、中ボスやラスボスといったハードルを越えることに楽しさを見出すタイプとは異なるゲームが主流となっているのだ。実際、多くのスマホゲームの戦闘にはオート機能が実装されていて、自分の手で戦闘を行う必要がない。ゲームを閉じている間に素材集めをしてくれるという機能こそないが、ある意味で放置系ゲーム化していると言える。「放置系ゲームって何が面白いの?」という疑問は、老害故に生まれるのかもしれない。