拝金主義的ネットビジネスに対するモヤモヤ

ネットビジネスとはインターネットを介して行うビジネスであり、最近では副業の定番、人によっては本業にできるほどの立ち位置となっている。しかし新しいビジネス領域であることが一因なのか、一部ではやりたい放題な状況になっているように思える。「違法ではないが、倫理的にどうなの」とモヤモヤを感じるのだ。このモヤモヤをここで吐き出していく。

個人コンサル

コンサルは個人が大きく稼ぐ際の定番の手法だ。まず何かの分野である程度の成功を収め、その実績をもとにコンサルを名乗る。例えばブログコンサルであれば半年で30~50万円ほどが相場であり、複数のクライアントと契約すれば本業レベルで稼ぐことも可能だ。そのためコンサルになることを最終的なゴールに掲げる人もいる。

このコンサルに対するモヤモヤの原因は複数ある。まず、誰でもコンサルを名乗れてしまうことだ。何の知識が無くても実績をでっち上げてSNSなどで集客をすればコンサルになれるのだ。実際、ブログ初心者に中身のないコンサルを売りつけるという手法は以前から横行している。

さらに契約時に金銭を貰った後は対応が雑になるコンサルも珍しくない。聞いた話だが、界隈でそこそこ有名な人のコンサルに申し込んだところ、申し込み前は対応が早くて丁寧だったが、申し込み後は対応がかなり遅くて雑になったという経験をした人もいるようだ。これに関してはコンサル側とクライアント側で認識のズレがある。クライアント側からすれば30万円も払っているという感覚だが、コンサル側からすれば30万円しか貰っていないという感覚なのだ。というのも、半年で30万円ということは1か月で5万円だ。1日換算だと約1,600円であり、1日1,600円でできるコンサルなどたかが知れている。ここで言いたいのは、コンサル側がこれを分かった上でコンサルをしているのはどうなの、ということだ。クライアント側の認識の誤りを盾にして楽にお金を稼ごうとするのは正当な手段と言えるのか。

また、そもそも個人のクライアント相手にコンサルをしたところで、そのクライアントの成功確率は低い。理由は2つあり、1つはコンサルの力不足、もう1つはクライアント側の問題だ。コンサルは誰でも名乗れるという性質上、力量が保証されていない。例えば企業のチームの一員だったという理由で成功しただけの人が、すべて自分の実力だと勘違いしたまま副業でコンサルを始めるケースがある。少し前に小規模の経営コンサルが大量に倒産しているというニュースがあったが、これは自身の力量の過信が理由の1つだろう。またクライアント側の問題に関しては、個人のクライアントはコンサルのし甲斐がないことが多いのだ。というのもコンサル側が「これをしてください」と言っても、「分かりません」「時間がありません」「他の楽な方法でお願いします」という対応をされたり、そもそもほとんど対応してくれなかったりするケースが少なくない。実際に作業をするのはクライアント側なので、いくら腕の良いコンサルが付いたところでクライアントが実行しなければ成果は出ない。コンサルからすればこのようなクライアントは楽なので良い金づるではあるのだが、お金を貰う仕事として価値があるのかという疑問がある。

言ってしまえば、全てコンサル側が「悪い」というわけではないにしろ、価値を生み出さずに大金を貰う仕事となっている側面があり、仕事として存在価値があるのかと感じてしまう。

YouTubeチャンネル運営

YouTubeも定番のネットビジネスの1つだ。YouTube運営には様々な形態があるが、ここで言及したいのはチームで行うタイプの運営だ。YouTube運営にある程度造詣の深い人がディレクターとなり、クラウドワーカーが実際の台本作成や動画編集をするという体制で運営しているチャンネルがある。ゆっくり動画のような、自分の顔や声を出さないステルスYouTubeはこの体制で運営されている可能性が高いと考えて良いだろう。

この体制に関してモヤモヤがいくつかある。まずクラウドワーカーは非常に安い賃金で作業をしていることが多い。1文字0.5円~1.0円ほどが相場であり、1つの長尺動画の台本を作成しても最大5,000円程度にしかならない。台本作成自体に数時間はかかることに加え、添削からの修正でさらに時間がかかるため、時給換算するとスーパーやコンビニで働いた方が圧倒的に効率が良い。動画編集に関しても時給換算だとかなり安く、動画素材の収集や編集時間を考えると最低賃金を大きく下回る時給だ。ある程度以上の技術を持つ人が上に立って人を雇うという形態はどこでも見られるが、YouTubeチャンネル運営に関しては雇われている側の労働環境があまりにも悪いように感じる。自分の書いた台本の動画が数十万回再生を連発しても賃金への還元が全くないこともザラなのだ。

またこうしたゆっくり動画制作は、他者が運営するブログなどから内容をそのままパクって動画にするという手法をとっていることが多い。パクること自体に否定的なわけではないが、パクっただけの動画の価値とは何だろうか。複数のゆっくりチャンネル運営者がこのような手法をとっているため、YouTube上には似たような動画が多く並んでいる。実際ほぼ同じタイトルの動画を2つ以上見かけたことがあるし、似たようなゆっくり音声を使っていることも相まって、もはや同じ動画が複数作成されていると言っても過言ではない。

さらにステルスYouTubeチャンネルは売買が行われていることもある。チャンネル売買自体は規約で禁止されているわけではないため何の問題もない。ただし視聴者はそのチャンネルを気に入ったからチャンネル登録をしているわけであり、裏でチャンネルを売買して他の人に譲渡するというのは誠実さに欠けるように感じてしまう。ある程度育ったチャンネルを売るという事業自体、仕事としてあまりにも謎のようにも感じる。価値を育てて売るという手法自体は社会で行われていることだが、YouTubeチャンネルに関して言えばM&Aにおける投資ファンドのようなものとは違う性格ではなかろうか。

このように特定のチャンネル運営体制に関して、「健全な」運営なのかがよく分からずモヤモヤしてしまう。

転売、メルカリ

転売はインターネットの発達によって定番化したビジネス(笑)だ。転売に関しては別の記事でその無価値さを述べているのでここではあまり触れないが、明確に無価値で迷惑なだけのビジネス(笑)と言える。SNSなどで転売ヤーを名乗っている人や転売ヤーを擁護している人は生き恥を晒していると思ったほうが良い。

関連して、メルカリのようなインターネット上のサービスに対してもモヤモヤしているところがある。一部の倫理観の無いユーザーはメルカリを転売のために利用している。最近だと米の高額転売が話題だが、マスクや消毒液、PS5など、転売ヤーの餌食になった財は枚挙にいとまがない。いわばメルカリは転売の温床であり、社会的に重大な問題になっているにもかかわらずメルカリ側は何の対策もしていないと、少なくとも一般ユーザー目線では見えてしまう。転売以外にも、例えばメルカリに出品されているゲーミングPCはほぼすべてが詐欺目的のジャンク品であり、そのような詐欺出品が規制されることなく横行している。もちろん転売や詐欺を行う人が最も悪なのだが、何の対策もしないサービス側に良い印象を持てないのは仕方のないことだろう。

転売からは逸れるが、ゲームのRMT(リアルマネートレード)専門サイトなどもある。RMTは法律違反ではないものの多くのゲームの利用規約で禁止されていて、そんなRMTを堂々と行っているサイトがあるのだ。

いずれのケースにしても、法律違反でなければ何をしても良いという風潮が、インターネット上での個人間の取引の場において特に蔓延しているように感じ、あまり良い気はしない。

金稼ぎが優先されている印象

ここで紹介したものを含め、ネットビジネスでは金稼ぎが優先されすぎている印象を受ける。世の中が拝金主義的になっている影響か、自分さえ良ければ他人が損しようがどうでも良いという人がネットビジネスでの荒稼ぎを狙っているように思えてしまう。ビジネスというのは自分が社会に対して何らかの恩恵をもたらしたいという思いが優先されるべきであると考えている立場からすると、このようなテイカー的思想を受け入れたくはない。

これが「悪意」で以って行われているならある意味でまだマシだが、「純心」で以って行われている場合、ネットビジネスという土壌そのものが汚染されていると言わざるを得ない。このような風潮、思想が当たり前になっているということだからだ。

もちろんネットビジネスをしている全員がこうだと言うつもりはないが、副業として始める人が多いという性質上、このような状況になってしまうのは自然とも言える。「正しい」ビジネスの形になってほしいと、理想家の一個人としてモヤモヤを吐き出させてもらった。